同志社大学発のスタートアップ、Patentixは10月31日、浮遊帯域溶融法(Floating Zone Method:FZ 法)を用いて、ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)バルク結晶の育成に世界で初めて成功したと発表した。次世代高性能パワー半導体の実現に向けた大きな一歩となる。

r-GeO₂は、現在ワイドバンドギャップ半導体の主流となっているSiCやGaNと比べて、さらに大きなバンドギャップを持つ材料で、4.68eVの広帯域ギャップを特徴とする。この特性により、p 型と n 型の両導電性の制御が可能であると理論的に予測されていることから、高耐圧・高出力・高効率なパワー半導体デバイスの実現の鍵となる、次世代の半導体材料として注目されている。

一方で、同材料をデバイスとして利用するには、高品質で大きなバルク基板が必要である。同社はこれまでに、Flux 法を用いたバルク結晶の合成を報告しているが、そのサイズは最大で約 15×2.5×2.5 mmであり、 デバイスとして利用するには不十分であった。

同社は従来のFlux 法で合成したr-GeO2バルク結晶を種結晶として、FZ 法によりr-GeO2の結晶育成に成功した。育成された結晶は5mmの大きさで、側面にはファセット面が確認でき、高い結晶性が窺える。X線解析測定法での評価の結果、ファセット面はr-GeO2の(110)面であることが確認され、結晶部を粉末化して解析すると、r-GeO2の結晶ピークが確認できたという。一方で、ルチル型とは異なる相のトライゴナル型GeO₂のピークも観測されており、育成された結晶にはルチル型以外の成分も含まれていたという。

同社は今後、特にルチル型GeO2のみからなるバルク単結晶の実現を目指し、早期にハーフインチサイズのr-GeO2バルク基板の開発を目指すとしている。