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GNCレター
旭化成エレクトロニクスは9月9日、車載用パワーモジュールに電流センサーを一体化する概念実証(PoC)に成功したと発表した。この技術により、次世代のSiCパワーデバイスを用いたトラクションインバータやDC/DCコンバータにおいて、従来使用されていた磁性体コア(鉄などの金属部品)を不要とし、それぞれの部品の小型化・軽量化・高効率化が可能となる。
近年、xEV(電動車)の駆動系において、より高効率で軽量なシステムが求められており、広い電流レンジでの高分解能な電流センシングのニーズが高まっている。特に電流量の幅が大きいトラクションインバータでは、低速走行時から加速時までさまざまな運転条件下での正確な電流検出が求められる。従来、磁性体コアを用いて磁束を集中させる電流センサーが用いられてきたが、小型化、設計自由度の面で課題があった。
同社が開発するリニアホールIC「EZ-232L」は高精度・高分解能で、コアレス電流センサーとして使用でき、微細な電流の検出を可能にする。同モジュールは2026年度の量産開始を予定する。
同社は墺の研究機関Silicon Austria Labsと共同で、同モジュールを用いて電流センサーを一体化したパワーモジュールを試作し、高精度の電流検出ができることを確認していた。その後、今年6月には、別の外部評価機関で、トラクションインバータの模擬システムを用い、コアレス電流センシングを使用して実際にインバータを駆動させるシステム検証を実施、結果として、従来のコアを用いたシステムと同等の効率でインバータ動作が可能であることを確認したという。
同社のM&Sセンター・ソリューション開発第四部長を務める高塚俊徳氏は「二つの技術実証により、次世代電動車のパワーモジュールにおける電流センシングの新たな可能性を示すことができた」とし、「コアレス化の実現により、従来方式では実現が難しかった小型化、および設計自由度の向上に貢献することで、より競争力のある電動車システムの開発を後押ししていく」と強調した。
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