米のヘルスケア企業Ainosと半導体後工程世界最大手の台ASEは2025年3月12日、AIによるにおいのデジタル化の半導体産業への活用を目指し、戦略的パートナーシップを締結したと発表した。このパートナーシップは、Ainosの特許技術である「AI Nose」を活用し、空気中の化学物質を分析して「Smell ID」を作成することで、プロセス効率、環境安全性、環境・社会・ガバナンス(ESG)コンプライアンスを向上させ、半導体製造に革命を起こすことを目的としている。

Ainosはカリフォルニア州サンディエゴに本社を置き、AIを活用した新しいポイントオブケア検査(POCT)と低用量インターフェロン治療薬(VELDONA)に重点を置くヘルスケア企業。同社は10年以上の歳月をかけ、2024年の8月にAIによってにおいをデジタル化する独自のシステム「AI Nose」を開発した。当初は医療診断における揮発性有機化合物(VOC)の検出を目的としていたが、現在は活用の幅を産業分野へと広げることを目指している。

「AI Nose」は有害なガスや薬剤の漏れを監視・防止する機能を備えており、汚染リスクを軽減し、作業員の安全を確保しながらも、効率的な工場運営を実現する可能性を秘める。こうした観点から、特に半導体産業への活用が期待されている。Ainosは2024年8月に日本の半導体製造工場における22種類のVOCのサンプル761個を79%の精度で識別したと発表している。

今回のパートナーシップにより、AinosのVOC感知技術をASEのスマート工場に導入し、空気組成データを実用的な情報に変換することにより、空気化学の微妙な変化の検出による製造プロセスの最適化、材料の摩耗、酸化、汚染の初期兆候の特定による予知保全、厳しいESG規制を満たすことによる環境モニタリングの強化が実現される。

ASEのCEOを務めるTien Wu氏は「今回の発表は、AIを活用した製造、環境安全、優れたESGに対するASEのコミットメントを強化するものだ」とし、「我々は、持続可能性を推進しながら、業務効率の向上に役立つ香りをデジタル化することで、Ainosと共にイノベーションの限界に挑戦している」と述べた。

両社は今後、パートナーシップを通じて、半導体パッケージングとテスト環境向けにAIを活用したVOC検出の改良、ASEの事業全体へのAI Noseの大規模展開、AIを活用した空気インテリジェンスの広範な産業応用を目指していく。