SiCパワーデバイス世界最大手であるスイスのSTマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は6月7日、中国の三安光電と合弁で中国・重慶に約32億ドル(約4,450億円)を投じて8インチSiCウエハを製造する企業を設立すると発表した。公示によれば、新たな合弁企業では2025年の第4四半期に生産を開始し、2028年にフル稼働することを目標としている。また、三安光電は同合弁企業のニーズに対応するため、同じく重慶に約70億元(約1,370億円)を投じて8インチ SiCウエハの製造工場を新設する。

STによれば、この合弁企業では、同社独自のSiC製造プロセス技術を活用し、同社向けのSiC製品のみを製造し、STの専用ファウンドリとして中国顧客の需要に対応する予定であるとしている。また、三安光電によれば、STの製造プロセス技術を利用することで、月産40,000枚の8インチSiCウエハによるチップを製造できる見込みであるとしている。

STの社長兼最高経営責任者(CEO)であるJean-Marc Chery氏は、「新設予定である三安光電の8インチ SiCウエハ製造施設、合弁企業による前工程工場、および深圳にあるSTの後工程工場を組み合わせることで、STは中国の顧客に完全垂直統合型のSiCバリュー・チェーンを提供できる」と述べている。

また、三安光電の最高経営責任者であるSimon Lin氏は、双方の企業が各々の強みを発揮することで生産能力を拡大できるとともに、SiC半導体の市場での広範な応用を推し進めることができるため、新エネルギー自動車事業の素早い発展を推し進めることができるとしている。

STは米国による対中政策によって停滞が見込まれる中国市場に対し、中立国の企業であるという強みを生かして積極投資を展開することで、市場の再活性化に寄与するものとみられる。