4月11日ソニーグループは、戦闘ゲーム「フォートナイト」等の人気ゲームタイトルを抱える米エピックゲームズに10億ドルの追加出資を行うことを発表した。今回の出資は、2020年7月の最初の出資から3度目となり、総額では14億5千万ドルに上る。このソニーグループのエピックゲーム社への投資は、来るメタバース市場を見据えたものであるという見方が強い。フォートナイトというゲームは1人称視点で展開されるため、エピックゲーム社の持つソースはVR空間との相性が良い。また、ソニー自体も古くからゲームを展開し、ゲームを使ったスポーツであるeスポーツは一大ムーブメントとなり、アジア大会等の格式高いスポーツイベントの競技としても採用されている。

このソニーも注目する「メタバース」という単語は、英語の超を表す「meta」と宇宙を表す「universe」を組み合わせた造語であり、現在では仮想空間全体の名称として定着している。その中でも、現在はゲーム(eスポーツ)市場が最も定着している。ソニーでは、前作のゲーム機Playstation4において Playstation VRを発売し、より没入して楽しむゲーム機の新たな楽しみ方を提案している。

ゲーム市場で言えば、米Microsoftも家庭用ゲーム機である「Xboxシリーズ」を展開している。同社も2022年1月に戦闘ゲーム「コールオブデューティ」を展開するゲームソフトメーカー、アクティビジョン・ブリザード社を7.9兆円もの金額で買収することを発表した。この巨額の買収劇も、Microsoftが今後来るメタバース時代で優位に立つための投資であると見られている。一方、Microsoftではソニーのように最新ゲーム機のXbox Series Xに対応するVRマウントを発売していない。また、家庭用ゲーム機での世界シェアもソニー、任天堂に次ぐ世界3位となっている。任天堂もVRには対応していないが、コントローラにモーションセンサを搭載し、体を動かして遊ぶゲームに定評がある。今後MicrosoftでもVRに対応して首位のソニーを猛追する事が考えられる。
一方、Microsoftが持っていてソニーが持っていないのがビジネス向け市場である。同社では、企業向けのコミニュケーションプラットフォームであるTeamsにメタバース機能を実装(Mesh for Teams)。物理的に異なる空間にいる人々が、オリジナルの髪型や表情、服装を備えた自身のアバターを介して、コンピュータ内の仮想空間で画面上のボディランゲージなどを踏まえた会議やコミニュケーションを行うことを目指す。

一方、ゲームの他にメタバースと相関性が高いものが、SNSである。米Facebook社は2021年、社名をMetaに変更し、メタバース時代を見据える。これまでは文字、写真、動画による、一方的な投稿がメインだったSNSに、メタバースによる相互コミュニケーションが加われば、SNSの価値は飛躍的に増大するであろう。Meta社では、FacebookやinstagramといったSNSサービスの他にVRヘッドセットである「Meta quest2」を発売しており、VRゲームやVR動画で没入体験をすることが可能だ。

その「Meta quest2」では、2021年8月に「Horizon Workrooms」というメタバースのワークスペースを立ち上げた。この「Horizon workrooms」は、「Meta quest2」を装着した人が、バーチャル上のワークスペースで仕事を行う事ができるというものである。VRヘッドセットを使用することによって、離れた場所にいても、皆で空間を共有する意識を強めることが出来る。今後、Meta社はSNSサービスとVR機器のコラボレーションを発表することが充分に考えられるだろう。

市場調査期間OMDIAは、2030年までの半導体産業の成長を牽引するものが「メタバース」であると見ている。メタバースによって、スマートフォンからVR、ウェアラブル機器へ。双方向コミニュケーションの増加によって、取り扱うデータ量も飛躍的に拡大していくだろう。