半導体受託生産大手、米GlobalFoundriesは2025年10月28日、独ドレスデンの工場に11億ユーロを投資し、生産能力を拡張すると発表した。投資により、2028年末までにウエーハ生産能力を年間100万枚にまで拡大し、欧州最大規模の拠点とする計画だ。欧州における半導体サプライチェーンを強化する狙いがある。

同計画は「SPRINTプロジェクト」と呼ばれ、欧州半導体法の枠組みの下、ドイツ連邦政府およびザクセン州の支援を受ける予定であり、EUによるプロジェクトの全面承認は2025年内に見込まれている。なお、プロジェクトの一環として、施設は重要な半導体セキュリティ要件に対応するため、欧州内で完結するプロセスとデータフローを提供できるようアップグレードされるとのことである。

新たに増強する生産能力では、同社の差別化された技術に焦点を当てる。ここには、消費電力、組込み型セキュアメモリ、ワイヤレス接続といった重要な機能が含まれる。これらは、自動車、IoT、防衛、重要インフラ用途における欧州のチップ需要を満たすために不可欠であるとともに、フィジカルAI技術の台頭により、急速な変革が進んでいるとし、同社の半導体は「その中核を担っている」としている。加えて、今回の投資を通して、今後の10年に向けた次世代コンピューティングアーキテクチャおよび量子技術のイノベーションも支援するとしている。

特に自動車分野に関しては、中国企業の傘下にある蘭Nexperiaの製造する車載半導体が、中国の政策の影響で中国外に輸出できなくなるなど、供給不足に陥り、自動車業界も打撃を受けている。こうした危機を回避し、安定的な半導体の供給網を構築するには今回のプロジェクトが大きなカギとなる。

同社のCEOを務めるティム・ブリーン氏は、「自動車分野における最近の混乱は、世界のチップ供給網がいかに脆弱であるかを浮き彫りにした」とし、「ドレスデンでの拡張計画は、こうした課題に正面から取り組み、欧州の安全なサプライチェーンと差別化技術へのニーズを支援するという当社のコミットメントを実現するための一歩だ」と述べた。