半導体受託生産大手、台湾・PSMCは2月6日、東北大学発のベンチャー、パワースピンと提携し、記憶用半導体の磁気式メモリ(MRAM)の量産を目指すと発表した。2029年までの量産開始を目標とする。

MRAMは理論的には消費電力を既存メモリの100分の1に抑えられ、高速で読み書きが可能で、電源を消してもデータが消えないという利点がある。また、データ保持性能にも優れている。速度についてはNANDよりも早くSRAMと同等のレベルであるため、キャッシュメモリや新しいタイプのストレージクラスメモリ(SCM)としても利用できる可能性がある。現在、米・エバースピン・テクノロジーズが量産を行っており、MRAMの市場規模は2022年に300億円に達したとされる。一方で、製造コストが高いほか、既存メモリに比べ耐久性、信頼性などに課題がある。

MRAMは「スピントロニクス」と呼ばれる、電子が持つ磁石の性質(スピン)を活用した技術を応用したものである。東北大学では長年にわたって「スピントロニクス」に関する研究が行われてきた。パワースピンでは、スピントロニクスの原理を採用したLSI(大規模集積回路)の設計や試作、評価解析サービスを提供し、設計、試作、量産に関するコンサルティングや同社が保有する特許のライセンシングサービスなども行っている。

PSMCはSBIホールディングスと2023年8月に合弁会社を立ち上げ、宮城県大衡村に半導体量産工場の建設を計画している。新工場は第1期が2027年稼働、第2期が2029年稼働の予定で、総額8000億円の投資となる。MRAMは第2期の生産ラインで量産される見込みである。将来的には生成AI向けデータセンターでの利用が期待されている。