富士通は12月12日、半導体基板を手掛ける子会社の新光電気工業を政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)などに売却すると発表した。JICは大日本印刷(DNP)や三井化学と共同でTOBなどを通じ、全株式を取得する。買収総額は約6,850億円となる見通しで、売却後、新光電気工業は上場廃止となる。

新光電気工業は1946年に創業され、本社や主な生産拠点を長野県に置いている。現在ではパッケージ基板を生産・販売する世界有数の企業として、Intel、AMDなど、世界半導体大手を主要顧客に持ち、特にフリップチップタイプパッケージで世界トップクラスのシェアを誇る。また、AI半導体などの需要の増加に対応するため、長野県千曲市に高性能半導体向けパッケージ基板の新工場を建設、11月に竣工を迎え、2024年度から稼働開始する予定である。

今回の買収により、同社株式の保有比率は、JICが80%、DNPが15%、三井化学が5%となる。DNPと三井化学はともにパッケージング工程に使われる材料を手掛けており、同分野での協業を進めていくものと見られる。

富士通はかねてから非中核事業の切り離しを進めていくうえで、新光電気工業株の売却方針を明言しており、2022年1月から売却に向けた協議を始めていた。また、政府は半導体関連企業の国際競争力強化を図る目的で企業買収を進めており、両者の思惑が一致した動きであるといえる。