中国の半導体メモリ大手の長江存儲科技(YMTC)が米国の同業大手のMicron・technology(以下Micron)に対し、特許権侵害で訴訟を起こしたことが明らかになった。11月9日にMicronと子会社のMicron・consumer・products・groupを米カリフォルニア州北部地区連邦地裁に提訴した。

訴状によると、マイクロンは市場シェアの確保と維持を目的として、YMTCの特許8件を無断で使用し、特許使用への対価を支払わず、同社の利益を侵害し、イノベーションを阻害したとしている。また、Micronは自社の特許文書でYMTCの特許を引用し、同社の特許ポートフォリオの理解の重要性を証明しつつも、必要な手続きを行っていなかったとした。

YMTCが侵害されたと主張する特許は、US10,950,623(3D NAND記憶装置とその形成方法)、US11,501,822(不揮発性記憶装置とその制御方法)、US10,658,378 (三次元メモリデバイスのスルーアレイコンタクト (TAC))、US10,937,806(三次元メモリデバイスのスルーアレイコンタクト(TAC))、US10,861,872(三次元メモリデバイスおよびその形成方法)、US11,468,957(NANDメモリ動作のアーキテクチャおよび方法)、US11,600,342(三次元フラッシュメモリの読み出し方法)、US10,868,03(多層積層型三次元メモリデバイスおよびその製造方法)の8項目で、主に3D NAND関連である。同社はマイクロンの96層、128層、176層、232層の3D NANDメモリにYMTCの特許の保護範囲内にある技術ソリューションが含まれ、SSDで使用されていると主張した。同社は裁判所にMicronの侵害行為の差し止めを要求し、Micron側に損害賠償と訴訟費用の支払いを求めている。

米中対立激化による両社への影響は大きく、米国が2022年にYMTCを事実上の禁輸リストに加えたのをきっかけに、中国は対抗措置として、2023年5月に重要な情報インフラでMicron製品の調達を禁止した。これにより、Micronの2023年8月通期の最終損益が赤字に転落した。

一方、YMTCは米国製の半導体製造装置で生産を行っており、制裁の影響で悪影響がでているとされるが、200層を超える製品としては世界初となる232層のNAND型フラッシュメモリを販売するなど、先端半導体の開発・生産が継続されている。232層品はMicronも製造しているが、後手を踏んだ形になっている。なお、訴訟に関して、Micronはコメントを出していない。

今回の訴訟は米中関係にも直接的な影響が予測されるため、今後の動向が注目される。