信越化学工業と沖電気は、2023年9月に発表したQST基板上でGaNを成長させ、成長したGaNを沖の異種材料接合技術によって、他の基板と接合させる技術について、2023年10月5日に説明会を行った。

QST基板では、コアの熱膨張係数をGaNとマッチングさせたことにより、欠陥密度はSiの上でGaNを成長させるGaN on Siと比較して欠陥密度を1/1,000に抑えた上、成長時間は半分でもGaN層を2倍に厚くすることが可能としている。

今回の発表では、QST基板を用いたGaNを利用して、LEDやRF、半縦型のGaNを既に実証したことが新たに発表された。
一方で、縦型GaNデバイスはまだ実証できていないが、絶縁性のQST基板とバッファー層を沖の異種材料剥離接合技術であるCFBを用いれば、実現可能とした。

また、基板の大口径化も解決可能とし、既に6インチと8インチの基板は実証済みであり、

今後ターゲットとなる300mmについて、信越化学工業の山田雅人理事は、今期末にエピ成長実験用の300mmQST基板が完成することから、2024年度にはサンプルワークを開始したいと語った。

また、競合以上の結晶性向上を実現するための要素技術にも力を入れるとしている。

現在、縦型のGaNデバイスを目指す競合としてはGaNの種結晶の上にGaNを成長させるGaN-on-GaNが挙げられる。
GaN-on-GaNでは、大阪大学と豊田合成はいくつもの種結晶を1基板上で成長させる「ポイントシード法」とNaとGaの混合液体によって液相成長させる「Naフラックス」法を用いて、6インチのGaN種結晶の作製を達成している。また、大阪大学とパナソニックでは「OVPE法」と呼ばれる酸化物を原料に用いた新たな気相成長法を用いて、超低抵抗なGaNウエハを製造しており、結晶性ではこちらに分があると見られ、結晶性、コスト、大口径化といった性能達成によって、どちらが有利かが見えてくるといえる。