東芝は9月21日、日本産業パートナーズ(JIP)を始めとする国内連合20社超によるTOBが成立したと発表した。応募比率は78.65%となり、成立に必要な66.7%を上回った。年内にも上場廃止となり、上場企業としての74年の歴史に幕を閉じる。

同社は2015年に不正会計問題が発覚して以降、迷走を続けた。2017年には米国の原子力発電事業で巨額損失を出し、債務超過に陥ったため、アクティビストと呼ばれる海外の投資ファンドから総額6,000億円の出資を受けた。その後、同社は事業再編の方針を相次いで示したが、アクティビストの反発により実現には至らず、社長や取締役会議長が退任に追い込まれるなど、経営が混乱した。

そこで同社は、アクティビストの排除を狙い、2022年4月に株式の非公開化を含む戦略的選択の公募を実施。2023年3月には、TOB成立によって東芝を非上場化し、経営の安定化を図るとするJIPら国内連合による提案の受け入れを決め、同年6月、株主に応募を「推奨する」ことを発表した。

今回の買収により株主がJIP陣営に一本化され、アクティビストは退場する。これにより、中長期的な成長戦略を構築しやすくなる。今後はパワー半導体事業や再生可能エネルギー事業を軸にして再生の基板を固める計画である。特にパワー半導体事業では、今回の買収に計3,000億円を拠出するロームとSiCパワー半導体での協業を狙っているとみられる。

経営危機回避のために家電やメモリ半導体の事業を既に売却している同社には課題が山積みであるが、今後の主力事業をどのように会社の成長につなげるのか、非上場企業としての経営手腕が問われることになる。