半導体分析専業のTechInsightsは、カナダのオタワ研究所でHuaweiが中国国内向けで発売したスマートフォン「Mate 60 Pro」に搭載されているプロセッサ「Kirin9000s」を分析し、中国のファウンドリであるSMICで製造された7nmプロセスを採用していることが確認されたと明らかにした。米国は中国に対し、14nm以下の最先端プロセス技術を採用した半導体の輸出を規制しており、5G対応スマートフォンの製造は困難であると思われていた中、5Gに対応するSoCの国産化に成功したことになる。

同SoCのダイサイズは107mm²で、既存の「Kirin 9000」の105mm²より2%大きく、ダイ上のさまざまな機能を分析したところSMIC製であると判明した。初期の分析では、14nmプロセスよりも先進的だと分かったが、5nmプロセスよりも大きな臨界寸法が示されたため、ロジックゲートピッチ、フィンピッチ、バックエンドオブラインメタライゼーションピッチといった限界寸法を追加測定した結果、7nmであると結論付けた。

また、分解レポートによれば、同SoCは高性能コア4基、エネルギー効率に優れたコア4基、GPU「Maleoon 910」で構成され、Armの命令セットアーキテクチャ「Armv8a」を中心に据えて構築されている可能性が高い。また、マザーボードのスペースを節約するため、CPU+GPUチップの上部にモデムチップを積層しているとみられる。さらに、同SoCのCPUコアとGPUコアは、Huawei傘下の半導体部門であるHiSiliconが開発した前世代のSoCで採用されたArm製コアより、比較的低いクロック周波数で動作するが、この特徴は、SMICの次世代7nm製造プロセス「N+2」で製造されたものである可能性が高い。同社は極紫外線(EUV)リソグラフィ装置へのアクセスを制限されているため、従来の深紫外線(DUV)リソグラフィ技術に基づき、第1世代のプロセス「N+1」を構築したが、これはEUV技術に基づくTSMCの7nmプロセスにほぼ匹敵するとされる。

なお、SMICはビットコイン採掘業者Bitman Technologies向けに、中国初の7nmプロセス半導体を開発したが、歩留まりが悪く生産量が少なかった。今回の新SoCでは歩留まりが解消され、組み込みSRAMをサポートする先端プロセスを採用した初の量産品であるとしている。

中国は米国の予想を超える速度で半導体技術の向上を示しているが、これに対し、米国は現在よりもさらに厳しい規制を課す可能性があり、今後の動向が注目される。