韓国の光州科学技術院(GIST)は2023年7月19日、同大学の研究チームが米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同で、半導体を効率的に生産可能となる技術を開発したと発表した。

GISTのイ・ドンソン教授とMITの共同研究チームは、有機金属化学蒸着のみを通した、「窒化ガリウム(GaN)遠隔エピタキシャル」技術を開発した。半導体物質は、ウエハ上にウエハと同一または類似した物質を薄膜状にして成長させるエピタキシャルという技術によって生み出される。しかし、既存のエピタキシー技術では厚さ約1㎛の半導体物質を生産するために1㎜の厚さのウエハが必要となり、半導体物質のみを切り取って使用することは技術及び費用的に非常に困難であった。

同研究チームは、グラフェンのように非常に薄い二次元物質をウエハ上に乗せ、その上に半導体物質を成長させる「遠隔エピタキシャル」の技術を使用した。これにより、ウエハ上に描いた回路構造をそのままコピーするように薄膜状の半導体物質を生成できるだけでなく、半導体物質がウエハに直接結合しないため、これをウエハから剥離することも可能になる。

また、同研究チームは、窒化ガリウム(GaN)と似た特性を持つ窒化アルミニウム(AlN)ウエハを導入することにより、通常使用されるMOCVD法のみを用いても、グラフェン膜を損傷させることなくGaN薄膜の成長・剥離を行うことに成功した。

なお、AlNの表面にナノレベルの傷がある場合、グラフェン膜が損傷し、GaN半導体を剥離できなくなることも解明された。

GISTのイ・ドンソン教授は、「今回の研究成果で剥離まで可能なGaNエピタキシー技術を実現する方法と必須条件を示すことが出来た」とし、「MITとの持続的な研究交流を通して、遠隔エピタキシー技術のような半導体における並外れた技術を開発していく」と述べている。

同研究により、結晶性の高く高価なGaN半導体をコピーするように繰り返し生産できるようになった。今後、同技術が実用化されれば、高品質の半導体物質を低コストで量産することが出来るようになるため、開発の進むGaNパワー半導体の最大の課題であるコストの大幅な削減が期待できる。