フォトレジストやCMPスラリーなど、半導体材料で大きなシェアを持つJSRは6月26日、官民ファンドの産業革新機構(JIC)による買収計画を取締役会にて承認したと発表した。これにより、JIC側は今年12月下旬を目途にJSRに対し株式公開買い付け(TOB)を開始する。買収総額は約9,000億円となる見込みである。

JSRは、半導体製造に使用するフォトレジストの先端品の世界最大手であり、近年は次世代(NA≒0.55)EUV露光装置向けレジストの最有力候補とされるハフニウムやジルコニウムを応用したメタルレジストの開発製造を手掛ける米Inpria社を買収する一方で、祖業である合成ゴム事業を売却するなど、より半導体材料の製造に力を入れる方針を示していた。

TOBが成立すると、JSR社は来年中に上場廃止となる見込みである。非上場化することにより、JSRの経営資源を半導体に集中させ、国際競争力を高めようという考えである。

政府は半導体を経済安全保障上の戦略物質として定め、国内での先端品量産に巨額の支援を始めた。国内の半導体材料メーカーは市場シェアが高いものの、個々の企業規模がそれほど大きくないため、海外による買収の懸念がある。政府は競争力を維持するため、「国策」として各メーカーを囲い込み、素材から製品までの半導体サプライチェーン(供給網)を強くするとともに技術流出を阻止しようという狙いがあるとみられる。特に次世代EUV露光装置向けレジストは、世界の先端半導体の動向を左右する材料であり、JSRに白刃の矢が立ったと見られる。