2023年5月18日、岸田首相はG7サミットを前に、日本の首相官邸で世界の半導体大手メーカーの首脳陣と会談を行った。

この会談には台TSMC、韓Samsung、米Intel、米IBM、米Micron、米Applied Materials、ベルギーの国際研究機関Imecの7社(機関)の首脳陣が参加した。これらの首脳陣が一同に会するのは極めて異例である。参加した企業は以下の表のとおり。一部企業は、この会談の直後に、日本への投資計画を明らかにしており、今回の会談の成果は決して小さくなかったと見られる。

各大手メーカーの日本国内動向
TSMC(台) 政府より約4,760億円の助成を受け、熊本にて工場を建設中。現在2ヶ所目を検討中。

つくばに3DIC研究センターを開所

サムスン(韓) 横浜に後工程の研究施設を設けると言われている。
インテル(米) 量子コンピュータの開発において理研と連携に関する覚書を18日に締結。

TSMC、Samsungに次いで後工程の研究施設を設ける可能性がある。

IBM(米) ラピダスと「2nmノード技術」の開発において提携。

量子コンピュータで東大と米シカゴ大に1億ドルを拠出

マイクロン(米) 政府より約5,000億円の助成を受け、広島工場を増強。次世代DRAMの生産を目指す。

米国と日本の大学に82億円を拠出

アプライドマテリアルズ(米) 数年間でエンジニアを800人雇用、Rapidusとの連携を強化へ
imec(ベルギー) 北海道・千歳での研究拠点の設置を検討中。

かつて日本の半導体産業は世界シェア約50%を誇るものであったが、現在は約10%のシェアに留まる。今後益々半導体が搭載される製品、製品に搭載する半導体数量の増加、半導体のスペックが高まる中、再び半導体強国を目指す日本にとって、上記の外国企業は台湾に頼るだけではなく、中国、ロシア、北朝鮮への脅威に立ち向かう必要があり、今後の有事に備えて日本への支援を積極的に行うことで、より安定して半導体の供給を行うことができる。日本はこれら企業の支援を得ながら、これまでもトップシェアを誇ってきた装置/材料だけではなく、半導体分野でも再び強国を目指していく。

また、今回海外での強力な支援が取り付けられたことにより、当初は「お付き合い」とも言われ、10億円と半導体の最先端ラインを造るには少な過ぎた国内企業のRapidusへの投資がより活性化される可能性がある。

今回のG7サミット前の一連の日本政府、海外企業の動きから、日本の半導体に対する立ち位置は一段上に置かれた。今後、これらの支援も糧に、描いたロードマップが順調に進展することが期待される。