レクサスは2018年に発売したESで、世界初となるドアミラーレス車を発売した。

その1年後にはホンダが東京モーターショーで発表した市販間近のコンセプトモデル「E」がドアミラーレスを採用した。
ドアミラーレス車に搭載されるデジタルアウターミラーは、構成部品にディスプレイとカメラが2つずつ搭載される為、イメージセンサーやディスプレイの供給先からは熱い視線が注がれる。しかし、大半の自動車は通常のサイドミラーを採用し、レクサスESも21万6000円のメーカーオプションとなるため、搭載率は全体の1割ほどだという。本記事では今後のドアミラーレスの可能性を検証していく。

ドアミラーレスによるメリット

ドアミラーレスによるメリットは大まかに分けると、安全性に関するメリットと、環境性能に関するメリットに分けることができる。
まず、安全性に関するメリットを挙げていく。

①ミラーよりも視野を広げることが可能

車内に搭載されたディスプレイを最大限活用すれば、カメラを上下左右に動かしたり、画角を拡大縮小したり、カメラの位置を切り替えたりすることによってより周囲の安全に気を配ることが可能となる。
ホンダeでは、サイドミラーに2種類の画角を選択することが可能となり、ノーマルの画角で10%,ワイドで50%の死角が減ると発表している。その他、ディスプレイ表示のフレキシブルさを生かして、歩行者や2輪車を色を変えて表示して、ドライバーに注意喚起を促す、右左折、車線変更に適したミラーの表示方法といったシステムに応用が可能になると考えられる。

②気候の変化にミラーの視野が影響されにくい。

冬場はガラスが曇ったり、雪が覆う事によって、ドアミラーの視認性が悪くなる事が多い。
ドアミラーレス車は車内のディスプレイを視認するため、天候変化の影響を受けない。

③感度調整によって、外の明るさに最適なディスプレイ表示が可能となる。

感度を調整することによって、外が暗い場合の視認性をミラーより向上できる可能性がある。
しかし、それに伴い発生するノイズを減少させる手段を取る必要がある。

④視界の移動が少ない。

今まで、車外まで視線を移していたものが、エアコンの吹き出し口あたりまで減らす事ができる。

一方、環境性能に関するメリットは以下が挙げられる。

①騒音、燃費の減少

自動車の空力エンジニアを悩ませる要因の一つが、ドアミラー周りの流れの最適化である。ドアミラーは、ミラー部分が直角になっているため、前方から流れてきた空気が直角の位置で剥離して、乱流を生み出しやすくなる。
その結果、空気抵抗係数(cd値)が上昇し、騒音の発生や燃費の悪化を招いてしまう。レクサスESでは、ドアミラーレス化によって、cd値が0.01削減できた。これによって若干の燃費向上が期待できる。
これは小さな改良ではあるが、COP25での首脳陣の議論がまとまらなかったり、飛行機で移動することが環境破壊につながる風潮がある昨今、このような地道な技術革新で環境性能を向上させることは今後益々必要とされるであろう。

②車幅のスリム化

細い道を通るときに、車体は通るがサイドミラーは通らないといった事がよくある。ドアミラーがなくなることで、ミラー幅を気にせずに細い道を通ることが可能となる。
一方、今後の課題としては、より広いダイナミックレンジを採用して、カメラが太陽光やヘッドライトを捉えた場合の視認性や、ディスプレイに太陽光が当たったときでもはっきり見えるための改善が必要である。
より安価に提供することも今後の課題となる。

デジタルミラーはレクサスESではオプションで21万6000円、ホンダeはデジタルミラー標準搭載だが、車両価格が318万円(予定)とコンパクトカーの割には割高となっている。
デジタルミラーは車種ごとにチューニングは必要だろうが、部品は車種が異なった場合でも共通化できたり、オプション装備から標準化されれば更に安くなる。
今後採用車種が増えれば様々なメーカーが参入し、マーケットの拡大から競争原理が働き、高性能化と低価格化に拍車がかかるだろう。
一方、海外メーカーを見ても、Audiが電気自動車e-tronにOLEDディスプレイドアミラーレス車を発売し、

ダイムラーは大型トラックにドアミラーレスを採用した。

カメラの位置はドライバーを気にする必要がないので、
車体上部に取り付けられ、視界が広がった。


今後、ドアミラーレス車の採用率は益々上がっていくと言える。