2022年10月に誕生した、ソニーとホンダが共同出資したソニー・ホンダモビリティ株式会社(以下SHM)は、2023年1月5日〜8日に米ラスベガスで開催されるCES2023において、同社の新ブランド「AFEELA」と「AFEELA」ブランドのプロトタイプ車両を発表した。

「AFFELA」プロトタイプのコンセプトは、3A(Autonomy, Augmentation, Affinity)としており、

Autonomy「進化する自律性」として、特定条件下での自動運転機能、レベル 3 搭載を目指すと同時に、市街地等、より広い運転条件下での運転支援機能、レベル 2+の開発にも取り組む予定。また、最大 800TOPS*1の演算性能を持つハードウェアには、Qualcomm Snapdragon Digital ChassisのSoCを採用予定。
また、今回のプロトタイプには、車内外に計45個のカメラ、センサー等を搭載し、室内のインキャビンカメラやToFセンサーがドライバーの運転状況や走行状態をモニタリングし、不慮の交通事故防止へ貢献する。

Augmentation「身体・時空間の拡張」では、新しい HMIを提案し、クラウドで提供するサービスと連携することで、ユーザーごとにパーソナライズされた車内環境を実現し、ユーザーに運転以外の楽しみを提供するという。リアルとバーチャルの世界を融合していくことで、移動空間をエンタテインメント空間、感動空間へと拡張し、メタバースなどデジタルをフルに活用し、新しいエンタテインメントの可能性も追求した。その一例として、ソニーと提携する米 Epic Games(代表作はフォートナイト)とモビリティにおける新しい価値観やコンセプトの検討を開始し、センシング技術を活用した拡張現実(AR)によって直観的なナビゲーションの提供を目指す。SHMではソニーが家庭用ゲーム機で培った1億人を超えるユーザーも上手く取り込んで行くことを目指していく。

Affinity:「人との協調、社会との共生」においては、顧客だけでなく、自動車産業におけるパートナー、さまざまな産業を支えるパートナー、そしてモビリティにおける新しいエンタテインメントの創出に共にチャレンジしていただけるクリエイターの皆さまと、オープンで自由な環境を作っていくという目標を立てた。立ち上げた新しいサービスへの取り組みは、5Gネットワークを介して、継続的にソフトウェアアップデートを行い、進化・成長させていくという。

プロトタイプ車両はEVで、昨年発表されたVision-Sと比較して、丸みを帯びたデザインが特徴的である。エクステリアにはEV自体が光を通じて人に意思表示を行う「Media-Bar」が搭載され、新たな人とモビリティのコミュニケーションを模索していく。

一方、インテリアはまるで繭に包まれたような、無垢でやさしいラウンド基調のデザインとした。単に心地良いだけでなく、注意を逸らす装飾性を極力無くし、カラーリングもシンプルを徹底したという。人を中心とし、人が求める機能と体験の実現を目指すとしている。

今回、SoCを提供したQualcommは、スマートフォン分野のカメラ機能の向上に向けて共同開発を行なっており、「Quad Digital Overlap HDR」という新機能(クアッドベイヤー配列のセンサーを生かして撮った2枚の写真と、時間軸をずらして撮った2枚の写真をそれぞれセンサー内で合成。出来上がった2枚の画像をSnapdragon側で合成し、HDRを行う仕組み)を共に開発した。

今回の「AFFELA」の発表では、「Qualcommとソニーは次世代のモビリティ体験の実現に向けて、戦略的な技術パートナーシップを築いていく。」としており、チップセットのQualcommとチップセットの先のセンサからデバイスをソニーという役割分担で、両者のパートナーシップが更に強化されたことが窺える。

今回の協業にQualcomm Technologies 社長 兼 CEOのクリスティアーノ・アモン氏は
「自動車はますますコネクテッド化とインテリジェント化が進んでおり、自動車における体験も変化しています。 Snapdragon Digital Chassis は、次世代のソフトウェアデファインドな車両の基盤として、新しいモビリティ体験とサービスを実現します。 ソニー・ホンダモビリティと、自動車の将来に対する共通のビジョンを実現できることを嬉しく思います」

とコメントを寄せている。

SHMでは、今後このプロトタイプをベースに開発を進めていく予定で、量産車については2025年前半からの先行受注を開始し、同年中に発売を予定し、車体のデリバリーは2026年春に北米から開始するとしている。