住友化学と東京科学大学は6月2日、強相関電子材料の応用先として期待される「低消費電力メモリ」において、低消費電力化につながる2件の成果を得たと発表した。

強相関電子材料は電子同士が強く相互作用しあう物質群を指す。通常の半導体よりも省エネルギーで動作可能なうえ、電子の相転移が非常に速いため、高速のスイッチングが可能であるなどの特徴があり、次世代メモリや量子コンピュータへの応用が期待されている。

住友化学は強相関電子材料を省エネルギーと創エネルギーの双方に資する次世代の基幹技術と考え、2023年4月から東京大学、東京科学大学、理化学研究所と、クロスアポイントメントを活用しながら共同研究を推進してきた。その中で、東京科学大学とは「住友化学次世代環境デバイス協働研究拠点」を設置し、強相関電子材料の実用化促進に向けた研究を進めてきた。

今回、住友化学と東京科学大学が獲得した成果は以下の通り。

成果1:強誘電体(AlScN)の自発分極を利用して強磁性体(CoFeB)の磁気異方性制御に成功

成果2:BiFe0.9Co0.1O3において電場による磁化反転の新たな経路を発見

成果1は角嶋邦之准教授のチームと住友化学拠点との合同チームによるもの。強誘電体(AlScN)と強磁性体(CoFeB)の積層構造において、強誘電体の内部電場の方向を利用した、不揮発的な磁気異方性変化を見いだし、MRAMの実用化の課題となっていた、MRAMの制御に用いられるスピン偏極電流の省電力化に寄与する。

成果2は東正樹教授のチーム、神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)と住友化学拠点との合同チームによるもの。室温で強磁性と強誘電性を有し、次世代磁気メモリへの応用が期待されるBiFe0.9Co0.1O3について、これまでに研究されていた薄膜に対し垂直方向の電場による磁化反転を利用した素子構造では微細化が困難だったが、今回、従来とは異なる配向で成長させることで、印加した電場と垂直な磁化成分を反転できることを実験・理論計算の両面から実証した。これにより、BiFe0.9Co0.1O3を用いた磁気メモリ素子の設計において、分極反転のための電極と、磁化反転を検出するセンサーの、より自由な配置が可能になり、磁気メモリ素子の高集積化、高性能化が期待される。

住友化学は「今後も産学拠点間での研究開発を活発化させ、サステナブルな社会へのソリューションとなり得る革新的な新規技術基盤の確立および社会実装を推進していく」と述べた。

出典:住友化学 ニュースリリース