米半導体大手、Texas Instruments(TI)は2025年3月17日、現代のデータセンターにおける急速に拡大する電力需要をサポートするパワーマネジメントチップを開発したと発表した。新たなデバイスは3月16~20日に米ジョージア州アトランタで開かれたApplied Power Electronics Conference(APEC)で展示された。

ハイパフォーマンスコンピューティングやAI(人工知能)の継続的な成長に伴い、データセンターは画像処理半導体(GPU)やハードウェアアクセラレータをサポートするための電力密度、電力効率が重要となっている。電力密度増加とともに48Vの電力アーキテクチャへの移行が必要になる一方で、特に6kWを超える電力レベルの管理において、信頼性、拡張性、効率性を維持するということが課題となっていた。

こうした課題に対応するため、同社は「TPS1685」パワー半導体を開発。同製品は業界初の48V統合型ホットスワップeFuseであり、データセンターのハードウェアおよび処理ニーズをサポートするための電力経路保護を備えている。また、外部のセンス抵抗や電流センスアンプを必要とするアプローチではなく、これらの機能を統合することで設計を簡素化し、ソリューションサイズを最大50%削減しつつ、高電力レベルを維持することに成功した。

さらに同社はデータセンターの設計を簡素化するため、GaNパワー半導体の新しいファミリー「LMG3650R035」「LMG3650R025」「LMG3650R070」も発表。業界標準のTOLLパッケージでGaNの利点を活用し、設計者が高価で時間のかかる再設計を行うことなく、GaNの効率性を活用できるようになった。具体的には、高性能ゲートドライバーと650V GaN電界効果トランジスタ(FET)を統合し、高効率(98%以上)および高電力密度(100W/in³以上)を実現した。また、過電流保護、短絡保護、過温度保護などの高度な保護機能も統合しており、サーバー電源のようなAC/DCアプリケーションにおいて、より小さなスペースにより多くの電力を押し込むことを可能にした。

同社のインダストリアル・パワーデザインサービス担当GMのロバート・テイラー氏は「高度なチップがAIの計算能力を駆動する一方で、アナログ半導体はエネルギー効率を最大化するための鍵となる」とし、「私たちの最新の電力管理イノベーションは、データセンターが環境負荷を軽減しながら、デジタル世界の成長するニーズをサポートすることを可能にする」と述べた。