富士電機とデンソーは、2024年11月27日、両社が経済産業省に共同で申請した「半導体の供給確保計画」が認定されたことを発表した。これによって、両社は申請した計画に基づいてSiCパワー半導体に関する投資及び製造の連携を行い、今後の需要拡大に備えて供給基盤の整備・強化を実施していく。

今回の事業総額は2,116億円、経産省が約1/3に当たる705億円を助成する。

投資先工場はデンソーが大安製作所と幸田製作所に対して実施し、2026年9月から大安製作所ではSiCウエーハを8インチ換算で最大6万枚(年)、幸田製作所ではSiCエピタキシャルウエーハを最大10万枚(年)生産を行う。

一方、富士電機は松本工場に対して投資を行い、2027年5月よりSiCエピタキシャルウエーハを8インチ換算で年24万枚、SiCパワー半導体を31万枚生産する。

SiCウエーハについては、米国のWolfspeedやCoherent、中国のTankeblueやSICCが高いシェアを持っており、日本ではロームの子会社であるドイツのSiCrystalが存在するも、国内でのSiCウエーハの生産はほとんど行われていない。SiCエピタキシャルウエーハもレゾナックが世界シェアトップとなっているが、その多くは国外のウエーハメーカからSiCウエーハを輸入して加工している。

また、SiCデバイスでもシェアの大半は海外のSTMicroelectronics、Onsemi、Infineon Technologiesで7割強のシェアを握っており(出所:TrendForce)、日本ではロームの8%が最大となっている。

SiCが最も採用されるEVの世界シェアに目をやると、米Teslaに肉薄するまでシェアを伸ばしている中BYDを始め、複数の中国メーカがトップ10に食い込んでいる。日本では日産・三菱・ルノー連合として辛うじてトップ10に1社ランクインしている状態である。

今年は伸び悩んでいるものの、中長期的に見ればEVの普及は加速すると予測されており、日本の基幹産業である自動車が今後も世界で販売台数を増やすためには高性能、低コストのSiCデバイスの供給が欠かせない。

経済産業省では昨年、ロームと東芝デバイス&ストレージに対しても1,294億円を助成し、8インチ換算で年70.8万枚のSiCウエーハ、72万枚のSiCパワーデバイスの生産拡大を支援しており、来るEV時代に向けてSiCの内製化を進めている。