東レは12月16日、150℃で動作可能な高耐熱性をもつ高耐電圧コンデンサ用フィルムを開発したと発表した。今後、同フィルムのサンプルワークと量産化に向けた検討を進めるとしている。

電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)などの電動モビリティはモーターで駆動するが、フィルムコンデンサはその制御回路(インバーター)の動作を安定化する主要部品。同社は車載コンデンサ用PP(ポリプロピレン)フィルムで世界トップシェアを誇る。

近年、車載インバーターではエネルギー損失が少なく高温駆動が可能なSiCパワー半導体の採用が進んでおり、小型化・軽量化に向け、半導体の冷却機構の簡素化が検討されている。この動きの中で、周辺部品も150℃耐熱設計としてインバーター機構全体を超小型化・耐熱化する検討が進められているが、現状のPPフィルムコンデンサでは、耐熱性向上には限界があり、150℃の耐熱性確保は困難であるうえ、一般的な耐熱性フィルムには、信頼性を確保するためのセルフヒール性が不十分であった。

同社は独自のポリマー設計技術と二軸延伸技術により、高温での高い耐電圧を持つフィルム基材層を設計。さらにこの基材層に独自設計の高セルフヒール層を薄膜積層することで信頼性を向上した。これらにより、150℃耐熱を有する高耐電圧コンデンサ用フィルムを実現した。また、同社は名古屋大学未来材料・システム研究所の山本真義教授と共同で車載インバーターの実駆動環境でのコンデンサ評価系を新たに構築し、同フィルムを用いたコンデンサの150℃での動作を確認したという。

同社は「同フィルムを用いた150℃耐熱フィルムコンデンサは、信頼性を有しながら耐熱温度を高められることから、SiC半導体搭載インバーターの小型化/軽量化を可能とする。これにより電気自動車(EV)、船舶、空飛ぶクルマなどの電動モビリティや産業機械の低電費化を実現し、脱炭素社会実現や物流効率化といった社会課題の解決に貢献する」と述べた。