アナログ半導体最大手、米Texas Instruments(TI)は10月24日、日本の会津工場(福島県会津若松市)でGaN(窒化ガリウム)パワー半導体の生産を開始したと発表した。米テキサス州ダラスにある同社の既存工場と合わせると、GaNパワー半導体の自社製造能力は4倍になるという。

GaNは既存のSiに比べ、エネルギー効率に優れ、同じ電力をより小さなスペースで供給できる強みがある。また、高温下及び高電圧下でのパフォーマンスにも優れ、コストの削減にも貢献する。パソコンや携帯電話などの電源アダプター、暖房や空調システム、家電製品向けの小型モーターに搭載可能であるほか、サーバー電源や太陽エネルギー発電などで大きな力を発揮する。

加えて、ロボティクスでの採用も増加している。TIのGaNプロダクトマネジャーを務めるDavid Snook氏は、「ロボティクスでは現在、ソリューションのサイズに大きな制約がある。GaNを使用すれば、モータードライブのサイズが縮小できる。また、スイッチング周波数が高いため、バルク容量の必要性が減り、モータードライバーのサイズを50%縮小可能となる」とし、GaNの需要をけん引する可能性があるとしている。

会津工場に導入されたのは200mm(8インチ) GaNテクノロジー。今回の生産能力拡張により、TIはより多くのGaNパワー半導体を自社製造できるようになり、2030年までにGaNパワー半導体の社内製造比率を95%以上に拡大できるとしている。また、複数の自社拠点から調達可能となり、高出力でエネルギー効率に優れたGaNポートフォリオ全体の安定した供給が可能になる。

TIのパワーマネジメント事業担当シニアバイスプレジデントのMark Gary氏は「当社は3年前から日本におけるこの取り組みを進めてきた。GaNパワー半導体の自社生産能力が4倍になることで、顧客の需要に先んじて対応可能になる」と述べた。

なお、同社は2024年初めに300mmウエハ上にGaNを製造するプロセス開発の試験運用にも成功しており、会津工場も含め、将来的には300mmへの移行を視野に入れている。