光学系部品のオキサイドと半導体受託生産会社のJSファンダリは10月9日、電気自動車(EV)など向けの次世代パワー半導体の素材となるSiCウエーハの開発で協業すると発表した。「溶液法」と呼ばれる新たな製法で結晶を生産し、国内でウエーハに加工することで安定供給を図る。2024年度内にパワー半導体メーカーへのサンプル出荷を目指す。

オキサイドが事業化に取り組む溶液法とは、溶媒に溶け込んでいる溶質を種結晶上に析出させ結晶成長させる方法。SiCの場合、炭素製るつぼ内にシリコンを投入、加熱して液体とし、るつぼ材の炭素がシリコン溶媒中に溶け込むことでSiC溶質が作られる。そのSiC溶質をSiC種結晶に析出させ、SiC単結晶を成長させる。この方法は従来の「昇華法」に比べ、欠陥が少ないSiC結晶を作れるため、ウエーハからパワー半導体に加工する際の良品率が向上し、チップ当たりのコストを抑えられる。

今回の協業では、オキサイドが結晶を生産し、JSファンダリが結晶の切り出しや研磨、薄膜育成などを担う。EVのほか、変電所や風力発電所などの電力インフラへの活用も見込む。

オキサイドは今回の協業について、「溶液法SiCパワー半導体の社会実装を果たすためには、当社が取り組むウエーハに加え、製造バリューチェーンを構築することが重要」であるとし、特に研磨やエピタキシャルが「SiCパワー半導体の性能に直結する重要な工程」であるため、「国内初の独立系ファウンドリ専業企業で、パワー半導体の製造工程全般において豊富な実績と知見を有するJSファンダリと業務提携する」と説明した。

一方のJSファンダリは「溶液法SiCウエーハの事業化を通して、自社でのSiC事業へ、各工程における技術開発と製造経験に生かすことで、パワー半導体においてより価値の高いファウンドリー事業を展開していく」と述べた。

出典:株式会社オキサイド プレスリリース