信越化学工業は9月3日、GaN(窒化ガリウム)専用の成長基板であるQST基板の300mm化を実現し、サンプル供給を開始したと発表した。次世代通信計画「6G」向けの通信用半導体やデータセンター向けのパワー半導体の製造用材料として供給する。

GaNは従来のSi生産ラインが使用可能であることから、大口径化による生産コスト低減が期待されていた一方で、GaN成長に適した基板がないことから、大口径化により反りやヒビが生じやすく、生産歩留まりが低いという課題があった。

同社の「QST基板」は窒化アルミニウムなどを使ったGaN成長専用の複合材料基板。GaNと熱膨張係数が同等なため、標準的なSi基板と同等の厚さでエピタキシャル層の反りやクラックの抑制が可能である。また、Siに比べると割高なものの、1枚の基盤から生産できるデバイスが多いため、半導体の製造コスト削減に繋がる。元は米Qromis社が開発した技術であるが、同社は2019年にライセンスを取得した。これまで6インチ、8インチのQST基板及び各口径のGaN on QSTエピタキシャル基板の販売を行ってきたが、顧客からの強い要望により更なる大口径化に取り組み、300mm化に成功した。300mm化により、従来品から面積が2.3倍となった。一般的なSi基板と同じ面積となり、大幅なコストカットが期待される。

サンプル品の出荷は既に始まっており、10億円超を投じ、数年以内に量産する予定としている。主にデータセンター向けでの供給が見込まれるが、将来的には、電気自動車(EV)向けへの供給も視野に入れているという。

同社は「6インチ、8インチに加えて、300mm QST基板のラインアップにより、GaNデバイスの普及を大きく加速することができる」と新製品への期待を述べた。