東京大学と味の素ファインテクノ、三菱電機、スペクトロニクスの4法人は、DUVレーザー加工機を用い、パッケージ基板への3㎛の極微細な穴開け加工を行う技術を開発したと発表した。次世代半導体製造の後工程に必要となる技術で、今後、生成AIに必要なハイパフォーマンスコンピュータやデータセンター用チップレットなどへの適用が期待される。

現在、チップ実装基板における層間配線は40㎛程度の穴をレーザーで開け、金属メッキを施すという方法が一般的である。今後、チップの微細化に伴い、パッケージ基板の穴径においても5㎛以下の微細化が求められるが、現在のレーザー加工技術ではレーザーや光学系の特性で小さい径に集光することが困難であり、また高いアスペクト比の穴あけ加工はできないという問題があった。加えて、微細穴開け加工に適した薄い絶縁層も必要であった。

今回、東京大学が運営する「TACMIコンソーシアム」においてレーザー開発、加工機開発、材料開発およびパラメータ探索を得意とする4法人が技術を持ち寄ることで微細穴開け加工を実現した。

具体的には、半導体向け層間絶縁体として極めて高いシェアを占める味の素ビルドアップフィルム(ABF)に3㎛の微細な穴開け加工を行った。東京大学はガラス基板上に銅を蒸着した後、レーザー加工により銅をパターン状に削り取り、微細な銅の配線を作成した。その銅配線上に味の素ファインテクノが薄膜ABFを積層することで3㎛の絶縁層を形成した。また、スペクトロニクスは波長266nmのDUV高出力レーザーを担当し、三菱電機はDUV用に特別に開発したレーザー加工機の光学系を工夫し、集光サイズを従来よりもさらに小さくする改良を行った。そして東京大学でAIを活用した条件探索を行った結果、エッチング技術を用いることなくレーザー加工のみで3㎛直径の穴をABF上に作成することが出来た。

作製した微細穴の断面画像から、ABFには直径3㎛の穴が5㎛間隔で開き、銅の配線およびガラス基板まで貫通し、下の銅配線やガラスは削れていないことが確認された。(図1)

図1. 穴あけの方法と穴あけ後の断面図(東京大学プレスリリースより)

今後は、さらなる微細化に取り組むとともに、複雑化するチップレットの製造工程における技術課題について、レーザー加工で対応可能な範囲を拡大するための研究・技術開発を進めるとともに、大手半導体メーカーに同技術の周知を進めるとしている。

出典:東京大学物性研究所 プレスリリース