国内半導体大手のルネサスエレクトロニクスは1月11日、次世代半導体である窒化ガリウム(GaN)パワー半導体を設計・製造する米Transphormを買収すると発表した。買収総額は3億3900万ドル(約492億円)で、2024年下期までに子会社を通じて発行済み普通株式をすべて取得する。今回の買収によりルネサスはGaNの技術を自社技術として獲得することになる。

Transphormは米カリフォルニア州ゴレタに本社を置くGaNパワー半導体メーカーで、2007年に創業した。2014年には富士通セミコンダクターのGaNパワーデバイス事業を統合し、ゴレタの他、福島県会津若松市に製造拠点を持っている。車載向けGaNで国際規格を満たす技術を保有しており、耐圧650VのGaNパワートランジスタなどの製品群を持つ。

GaN半導体は熱伝導率が大きく放熱性に優れており、スイッチング性能も高いため、搭載するデバイスの高効率化・小型化が期待できる。ルネサスは2023年からGaN半導体事業の展開を検討していたが、買収という形で本格参入することになる。

ルネサスはTransphormの買収により、ワイドバンドギャップのポートフォリオを拡充する。車載用規格に対応したTransphormのGaN技術を活かし、EV向けX-in-1パワートレイン用途やコンピューティング、エネルギー、産業、民生向けのパワーソリューションの提供力を強化するとしている。

ルネサス代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は、TransphormのGaN技術を獲得したことにより、「ルネサスのこれまでのIGBTやSiCをはじめとするパワー半導体における取り組みが加速する」とし、「ルネサスの成長の柱の一つとなるパワー半導体のポートフォリオを強化・拡大することで、お客様がそれぞれに最適なパワー半導体のソリューションを選択いただける」と期待を述べた。