日新電機の子会社、日新イオン機器は12月11日、半導体デバイスを製造する際の材料改質プロセスに対して量産能力を持つ半導体材料改質装置「KYOKA(鏡花)」を開発したと発表した。シリコンなどの材料にイオン照射をすることで新機能を付与できる。材料改質に特化して量産能力を持つ装置は世界で初めてという。

AI半導体をはじめとした半導体デバイスの微細化とそれがもたらす低消費電力化、高機能化の更なる進展のため、新たなプロセスの導入が望まれているという。その一つがイオンによる材料の改質であり、SiやSiO2など半導体デバイスを構成する材料に低エネルギーのイオンビームを照射することで、元の材料には無い性質を付与させることができる。ところが、このプロセスには多くのイオンが必要となるほか、従来装置では生産性やコスト面で問題があったため、実用化は難しかった。

同社では「KYOKA」の開発を2017年より開始。スマートフォンディスプレイ製造装置で培った大電流イオン技術を応用して設計を進め、シミュレーションを用いたイオンビームの軌道解析や、機械・電気・ソフトウェア設計の改良を積み重ねた。これにより、1keV未満の低エネルギー領域を必要とする材料改質プロセスでも超大電流イオンビームでの処理が可能になり、材料改質を適用できる対象範囲がSiCなどへも拡大したことで、従来比3倍となる毎時25枚以上のスループットで材料改質を可能にし、市場の要求を満たす量産能力を実現できた。また、さまざまなイオン種を発生させることが可能なため、対象とする材料に応じた最適な改質を実現できるほか、300mmウエハに対応しているため、最先端半導体製造ラインへの導入も可能となっている。

同社は「KYOKA」について、「材料そのものの機能向上に加えて、材料の持つ性質を変化させることで、その後に続く半導体加工工程を容易にすることも可能なことから、デバイス性能の向上と製造技術の進歩の両面での貢献が期待できる」としている。同装置については、2024年4月より同社の滋賀事業所にデモ機を設置し、顧客へのサンプル処理を開始する予定。