半導体受託生産世界最大手の台湾・TSMCは7月20日、米アリゾナ州で建設中の新工場での生産開始が、当初予定の2024年末から25年にずれ込むことを明らかにした。製造設備の設置を担う技術者の不足が理由とされている。

TSMCのアリゾナ工場は約120億ドルを投じて2021年より建設が進められ、2024年末までに米国内で高性能半導体を生産開始することを目標として掲げていた。

同社の劉徳音会長によれば、生産が遅れるのは最先端の回路線幅4ナノメートルの半導体で、先端半導体向け製造装置の設置に必要な専門知識を備えた米国における熟練作業員が不足しており、「台湾から、米国の技術者を訓練するスタッフを送り、工期の改善をめざしている」とした。近郊にIntelの巨大半導体工場があることなどから、TSMCは現地への技術者雇用に苦戦しているとみられる。

なお、同氏は、同社が現在熊本県で建設中の日本工場の工期に遅れはなく、予定通り2024年末に生産開始する見通しであるとし、ドイツでも工場建設を評価・検討中であると述べた。台湾外の工場については、台湾内よりもコストが高くなる懸念があるが、同氏によれば、米国工場に関して、「米政府はTSMCのサプライヤー(素材などの納入企業)への補助金などの制度適用を決めている」としており、米国以外についても、コストギャップ縮小のために、各国政府と緊密に連携し、経済的支援の確保を目指すとした。