米トランプ大統領は2026年1月14日、一部の先端半導体の輸入に対し、25%の追加関税をかけるとする布告(大統領令)に署名した。但し、米国内での使用のために輸入した製品に対しては課税しないとしている。

声明では、関税の追加の理由として、1962年米国通商拡大法232条に基づき、「国家安全保障上の脅威に対応するため」とされている。また、米国の半導体生産能力は需要の僅か10%に過ぎず、大幅に不足しており、「海外サプライチェーンへの依存は深刻な経済的かつ国家安全保障上のリスクをもたらしている」とも述べている。半導体メーカー各社に米国内での半導体生産の強化を促す取り組みの一環とみられる。

ホワイトハウスの公表したリストによると、米NVIDIAの「H200」や米AMDの「MI325X」AIアクセラレーターチップなどが対象に含まれている。これらのチップに関しては、トランプ氏が2025年12月に、同製品の対中輸出を認める代わりに売上の25%を徴収する方針を示していた。また、1月13日には、米商務省はこれらのチップを条件付きで中国への輸出を認めるルール案を公表し、現在、台湾で製造している「H200」などのチップについて、米国内で第三者機関による検査を事前に受けることを義務化した。そのため、一度米国へと輸入する必要があり、その際に25%の追加関税が適用されることになる。そのため、今回の追加関税は、中国を念頭に置いた政策であるとも見て取れる。

今回の布告に対し、中国は「国家安全保障を理由に口実にした覇権主義」であり、「中国の技術発展を抑え込むための政治的な動きだ」として、強く批判している。一方で、中国内の半導体企業への積極支援により、自国製の先端半導体の開発を加速させる可能性がある。

台湾は今回の布告に対し、「25%の関税は台湾製の半導体にも適用される可能性が高い」と警戒しつつ、米国との交渉の上、1月16日には対米投資を企業投資と信用保証を併せて5000億ドルに増やすことを条件として、特別な負担軽減措置を盛り込むことに成功した。台湾と同様に先端半導体を製造する韓国は、自国の企業が不利益を受けないよう、米国側と緊密に協議する姿勢をみせている。また、産業通商部は自国の半導体関連企業・団体を緊急招集し、対策会議も開催したとのことである。加えて、EU政府も米国の関税政策について、「国内優遇政策だ」とし、欧州企業に不利益を与える可能性を強く懸念しており、EUの半導体サプライチェーン強化策「EU Chips Act」にも影響を与えることから、米国に協議を求める姿勢を示している。

一方、日本は今回の布告を米国の経済安全保障政策の一環として支持する構えで、企業への影響については慎重に見極める姿勢とのことである。加えて、インドも今回の布告について前向きに評価しており、中国・台湾依存からの脱却を目指す「半導体再編」であるという点で、自国産業育成の好機として捉える姿勢を示している。

なお、トランプ氏は各国との貿易交渉を継続することを商務長官らに指示しており、貿易交渉がまとまった後には、さらに広範囲の半導体製品に重い関税をかける可能性があり、今後の動向が懸念される。