東ソーは10月29日、GaN(窒化ガリウム)スパッタリングターゲット材を開発し、グループ会社の東ソー・スペシャリティマテリアル(山形県山形市)で製造を開始したと発表した。

GaNは照明向けLEDや小型急速充電機向け部品などで活用されている半導体薄膜材料。既存のSiに比べてエネルギー損失が低く省エネ効果が高いことから、データセンター向けパワー半導体やウエアラブルディスプレイ向けマイクロLEDを中心に市場の成長が見込まれている。GaN半導体の薄膜形成では原料ガスを基板表面に送り、化学反応を通して薄膜を形成するMOCVD法が主流となっている。この方法では高結晶性膜が得られる一方で、原料の利用効率が低く1,000℃以上での高温成膜が必要なため、製造コストが高いうえ、高In組成のInGaN均一膜の製造が困難となり、優れた緑色発光素子が得られないなどの課題がある。

同社は真空中でプラズマを利用して薄膜を形成する技術で、材料の利用効率が高く製造コストの低いスパッタリング法への置き換えを目指し、ターゲット材を開発。新たに開発されたGaNターゲット材は独自の合成・焼結技術による純度の高さが特徴である。同材を使用すると低温成膜でもCVD法と同等の高い結晶配向性をもつ GaN 膜を作製することが可能であり、コストを大幅に削減できるという。

同社は、「コスト優位性のあるスパッタリング法への置換えによる新たなターゲットビジネスを創出し、今後成長が期待される市場でのシェア拡大を図るとともに、半導体製造の低コスト化・省エネ化に貢献していく」とした。