ノベルクリスタルテクノロジーは2021年6月16日、防衛装備庁が実施する安全保障技術研究推進制度(JPJ004596)の支援を受け、高耐圧の酸化ガリウム(Ga2O3)縦型ノーマリオフ MOS トランジスタの基本構造の開発に成功したことを発表した。
図に、今回開発された酸化ガリウム縦型 MOS トランジスタの断面構造を示す。

開発したトランジスタの特徴は、(1)パワーデバイスに求められる低損失化、大電流化に有利な縦型デバイス構造を採用、(2)メサ幅をサブミクロン以下に狭めることでp型導電層を用いずにノーマリオフ化ができる FinFET構造、(3)ゲート絶縁膜内の電界強度を弱めるための高誘電率酸化ハフニウム(HfO2)絶縁膜、(4)新規に開発した高品質・厚膜エピタキシャル成長技術を用いて形成した低ドナー濃度(4×1015 cm-3)、厚膜(40 μm)の高耐圧ドリフト層を採用している。
今回作製したトランジスタ(メサ幅 0.4 μm, メサ長さ 60 μm)のドレイン電流-ドレイン電圧特性をみると、ゲート電圧0V で電流が流れないノーマリオフ特性を示し、最大電流密度は2.6mA/mm、オン抵抗は1.2×103Ωmm を示している。今回試作したトランジスタでは、ソースの n+層とチャネル層は 0.4 μm 程度離れており、ソース抵抗が高いと推測している。デバイス設計を改良することにより、さらにオン抵抗の低減が可能と考えられる。また、ドレイン電流オン/オフ比は8桁以上と大きく、サブスレッショルド係数は120mV/decade、ゲートリーク電流は測定限界以下であり、良好なトランジスタ特性が得られている。一方、ドレイン電流-ゲート電圧特性に0.2V 程度のヒステリシスがみられており、今後 MOS ゲート界面の改善が必要であることもわかっている。
同社では2025年度に600-1200Vの中耐圧デバイスから量産を開始し、3000V以上の高耐圧デバイスの量産準備を進めていく。