素材大手の住友化学は2024年11月20日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NEDO」)による2024年度「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」において、「パワーエレクトロニクス用大口径GaN on GaNウエーハの開発」に関する事業の採択を受けた事を発表した。

GaN on GaNウエーハは、GaN基板上にGaN層をエピタキシャル成長させた構造のウエーハで、シリコン基板上にGaN層を成長させるGaN on SiやLEDの製造で用いられるサファイア基板上にGaN層を成長させるGaN on SAPHと異なり、基板と成長層がGaNと同じ材料であることから、欠陥密度が低く、電気特性や熱特性、品質の改善が期待される。また、GaN on GaNは現在EV向けに急速に採用が広がるSiCパワーデバイス同様、縦に電流を流すことから、電気自動車(EV)や電力インフラなどの高耐圧品への採用が期待されている。横型構造でも、現在主流のGaN on Siに対して高性能であることから、高周波デバイスへの応用が期待される。

一方でGaN on GaNウエーハは大口径ウエーハを製造する事が難しく、現在の主流は2インチから4インチウエーハとなっており、価格も1枚あたり数十万と極めて高い。

そこで、住友化学では高品質かつ低コスト、デバイスメーカのプロセスに対応した大口径(6インチ)ウエーハの量産を実現していく事を目標とし、プログラムに取り組んでいく。

具体的には、エピタキシャル成長させる為の基板では、GaN結晶の長尺化、種結晶の高品位化、3次元成長技術などによる収率向上や品質向上を進める。

エピタキシャル成長においては、従来の有機金属気相成長法(MOVPE法)と比較してコスト優位性があり、エピタキシャル成長速度が10倍になるハイドライト気相成長法(HVPE法)を用いて、量産技術を確立させていくとしている。

GaN on GaNの基板開発は日本企業が強く、住友化学の他にも三菱ケミカル、豊田合成が6インチ基板の開発を進めている。